プラズマ波動物理とRF技術を一つの軸として、核融合・プラズマ科学分野で幅広く研究を展開しています。
•非誘導プラズマ電流立ち上げシナリオの構築
(電子サイクロトロン波,電子バーンシュタイン波+αによるコンパクト炉構想)
•高周波を用いた先進プラズマ加熱、電流駆動、制御手法の開発
•電磁波(マイクロ波・ミリ波)を用いた高温プラズマ計測技術の開発
•プラズマ放射(マイクロ波~硬X線)計測技術の開発
•大電力ミリ波要素部品の開発
•プラズマ波動物理研究
•高速電子とホイッスラー波の相互作用に関する地上実験
•RF pluggingによるダイバータ・SOLプラズマ制御
etc.
プラズマ中では、屈折、反射、透過、散乱、放射といった電磁波現象がおきます。電磁波を用いたプラズマ診断の基礎と最前線については、プラズマ・核融合学会誌の以下の講座記事が参考になると思います。
本研究室では、主に屈折、反射、放射現象を利用したプラズマ診断に取り組んでいます。測定対象のプラズマが大きいために、計測での波動伝搬距離が長くなり、用いる電磁波の周波数が低い(波長が長い)場合には、伝搬波は広がっていき、プラズマの局所パラメータを計測することが難しくなります。この問題を解決するために、位相配列アンテナを開発し、アダプティブアレイ手法による解析等を行っています。 アダプティブアレイ手法等のリモートセンシング技術は、大気・海洋分野、災害情報収集などの分野でも活用されており、幅広い分野との共同研究を進めています。また、英国カラム研究所との共同研究課題でもあります。
核融合炉として有望視されているトカマク型装置でドーナツ型のプラズマを閉じ込めるためにはプラズマ電流が必要です。 プラズマ電流は一般的にはトランス原理による誘導電場を用いて立ち上げられます。 一方で、定常運転が必要な核融合炉には誘導電場に依らない非誘導方式の電流駆動法の確立が不可欠です。 また、ドーナツの中心に鎮座する誘導電場を印加するためのソレノイド磁場コイルの設置スペースは炉設計へのインパクトが非常に大きく、先進炉設計ではこのコイルを除去したり、 極力小さくする方向で最適化が進められています。このスペースをブランケットや先進RF加熱のためのアンテナ等に利用できれば、炉設計の概念が変わります。 このソレノイド磁場コイルフリーの炉設計を推進するには、非誘導方式の電流駆動によるプラズマ電流立ち上げ(スタートアップ)も重要となります。
近年、大電力ミリ波電子管【ジャイロトロン管】(250kW 1s)システムを開発し(2021年度より定常ジャイロトロン管のインストールに着手)、これまでにない高電流(~80kA)プラズマを生成し、安定な配位で維持することに成功しています。
高密度プラズマでは入射した電磁波は反射してしまいますが(反射現象は密度計測に活用できます)、プラズマ中で波動モードを変換することでプラズマ中を伝搬させることができ、 本研究室ではモード変換によるプラズマ加熱・電流駆動にも取り組んでいます。 正に、プラズマ−波動相互作用の醍醐味を感じられる研究テーマです(このモード変換過程は、放射計測にも活用します)。 モード変換の波動伝搬を光線追跡(Ray Trace)解析で、波動吸収と駆動電流をフォッカープランク解析で検討しています。
高周波・ミリ波を用いた核融合プラズマの制御として、プラズマ電位(電場)分布制御や、安定性制御などがあります。核融合研究で大きな節目となる「燃焼」を目指し、世界の英知を結集しITER (国際熱核融合実験炉)が建設中です。 燃焼プラズマ実験では、プラズマパラメータの細部な分布制御が必要です。日本ではITER 研究をサポートするために欧州と共に進めているJT-60SA プロジェクトでの制御課題・検討の詳細が、以下のプラズマ・核融合学会誌の小特集記事に紹介されています。
これまでに実際にプラズマ電位(電場)分布制御を行ったことがありますが (H. Idei et al., Phys. Rev. Lett. 71, 2220 (1993) Transition of the radial electric field by electron cyclotron heating in the CHS heliotron /torsatron )、 最近は、制御に必要なビーム成形のための大電力高周波・ミリ波要素部品の開発を主に進めています。
「プラズマ診断」と「プラズマ制御」で紹介した位相配列アンテナや高速ミリ波導波管経路切替器は高周波・ミリ波要素部品開発の一部です。 「プラズマの生成・加熱・維持」や「プラズマ制御」では大電力(MWレベル)伝送が必要となります。大電力伝送において、アーキング(放電破壊)や過熱の問題を軽減するためには伝送電力密度を下げる必要があります。 そのため、大電力伝送に用いられる高周波・ミリ波要素部品は、波長に比べてかなり大きな「オーバーサイズ」となります。オーバーサイズ部品では低次の主要モードだけでなく、多様な高次モードが励起される可能性があります。 多様なモードが励起される際にはモード間干渉が起き、アーキング(放電破壊)や過熱の問題が起きます。不要な高次モード励起を抑えるには、きちんとビームを成形し、ビームを真っ直ぐに導波管の真ん中に結合させることが重要となります。 ビーム成形には位相補正鏡を用いることがあります。光を反射させて「像」を映し出す「魔鏡」の逆過程で、「像」に相当する複雑なモード干渉パターンを素直なビームに変換します。 鏡では反射時の波の位相を局所的に補正(制御)します。大電力ビームで波の位相を測定するのが難しく、位相分布は「再構成シミュレーション」で求めます。 この再構成法の実験検証をMIT(マサチューセッツ工科大学)との共同研究で進めました。共同研究において我々は「ミリ波位相の高精度測定」で貢献し、現在も導波管伝搬モード比解析についてMITとの共同研究を進めています。
ミリ波電界強度・位相3次元分布測定(QUEST装置内試験と低電力テストスタンド試験の様子
導波管伝搬モード測定器の開発をシュトゥットガルト大学、日本原子力開発機構との共同研究で進めています。 近年になってビームの振幅分布を表すベッセル関数の特徴を生かした測定器を着想し、開発を進めています。
不要高次モードの励起過程を精査するには低次主要モード発生器の開発が必要です。理論的にほぼ100%モード純度で励起できる新モード発生器を着想し、実験的にも98 % 励起に成功しています。 詳細は、社会人博士後期過程の工学博士論文としてまとめられています。
宇宙で輝く恒星は高温のプラズマ状態で、内部で核融合反応が起きることにより、日々莫大なエネルギーを宇宙空間に放出しています。
将来の究極のエネルギー源として期待される「地上の太陽」の実現に向けて、世界各国が協力して核融合炉の研究開発を進めています。
我々は筑紫キャンパスに球状トカマク(磁場により高温プラズマを閉じ込める方式の一つ)としては
日本最大のQUEST装置を構え、
主にRF(電磁波)を用いたプラズマの加熱と制御、プラズマ診断技術の開発や、関連するプラズマ波動物理に関する研究を行っています。
ITERや核融合原型炉で用いられるような大電力ミリ波要素部品の開発も進めています。
国内外の多数の大学・研究所との共同研究を進めています。詳細については高温プラズマ理工学研究センターのホームページをご覧ください。
プラズマは荷電粒子(電子や多種のイオン)の集まりであり、電磁力を介して多彩な複雑性を呈します。
非均一、非等方性に起因して多様な不安定性が発現し、自己組織化や突発現象といった非線形現象が観測されます。
非平衡系としての統計数理の研究対象でもあります。
波動と粒子との相互作用は普遍的であり、宇宙でまさに起こっている神秘的な現象を紐解く鍵を実験室で見つけることができると考えています。
デバイ遮蔽
クーロン衝突
ラーマー運動(∇Bドリフト)