高温プラズマ理工学研究センターでは、将来の基幹エネルギー源として必要とされる核融合炉の実現を目指し、先進的磁気閉じ込め配位である球状トカマク装置 QUEST (Q-shu University Experiment with Steady-State Spherical Tokamak)を基軸に基礎研究を行っています。
これまでの超伝導強磁場トカマク装置 TRIAM-1M により得られた知見を基盤にして、プラズマの長時間維持の研究計画を構想し、球状トカマクプラズマの長時間電流駆動およびプラズマ-壁相互作用の研究を推進しています。
QUESTは、国内最大の球状トカマク装置として2008年に建設されました。球状トカマクは、ITERに代表されるトカマクと比べて、高いプラズマ圧力を弱い磁場で閉じ込めることが可能であることから、建設コストにおいて優利となります。
プラズマから放出された高エネルギーの水素イオンはプラズマを取り囲む容器の壁に衝突して壁の中に入り込み、壁の中で動き回って固体中の欠陥に捕捉されたり壁表面に戻ってきたりします。
壁表面に戻ってきた水素原子は表面で「再結合」して水素分子になり、壁から放出されます。これを「水素リサイクリング」と呼びます。
プラズマの長時間定常運転、また核融合炉での重水素と三重水素の燃焼反応においては、この水素リサイクリングを制御して、水素分子の適切な混合比を維持することが重要になります。
QUESTでは、壁表面の再結合が壁温に強く依存する性質を利用した高温壁による粒子制御が提案され、室温から400℃までの温度条件で長時間トカマク運転が実施されています。
高温壁の温度は最高500℃まで昇温可能で、核融合炉の壁温を模擬した環境でトカマク実験を行うことができます。
QUESTのコイル及び電流電源はすべて定常運転仕様になっています。これまでの実験で2時間以上のトカマク配位維持を実現しています。
トカマクで高温・高密度のプラズマを閉じ込めるためには高いプラズマ電流を駆動する必要があります。
球状トカマクではオーム加熱用ソレノイドコイルを設置するスペースが限られていることから、非誘導プラズマ電流スタートアップが発展してきました。
QUESTは高周波を用いた電子サイクロトロン加熱(Electron Cyclotron Heating, ECH)による非誘導電流スタートアップで世界トップクラスの実績を誇っており、
筑波大・核融合科学研究所との共同で開発された28GHzジャイロトロンを使ったECCD(Electron Cyclotron Current Drive)で70 kA以上の完全非誘導電流駆動を達成しています。
また東京大学、京都大学、量子科学技術研究開発機構などの研究機関と共同でプラズマ計測を行っています。
今後は250kW定常クライストロン(周波数8.56GHz)を使った高電力定常ECH/ECCD、さらに電子バーンスタイン波による加熱電流駆動が計画されています。
CHI(Coaxial Helicity Injection)は真空容器内に設置された2つの電極間に高電圧を印可して放電させる非誘導電流スタートアップ法です。
電極間の高電流と磁場による電磁力でプラズマが膨らんで飛び出すバブルバースト現象が起き、さらに磁気再結合が生じると閉じた磁気面が形成されてトカマク配位に至ります。
2014年、九州大学、プリンストンプラズマ物理研究所(米)、ワシントン大学(米)の日米国際共同研究としてQUESTにおけるCHI実験プロジェクトが始動しました。
この他にもTokamak Energy(英)、IPR India(印)、ASIPP(中)、西南大学(中)、ソウル国立大学(韓)、マサチューセッツ工科大学(米)、シュツットガルト大学(独)などの研究機関と国際共同研究を進めています。